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バイマンスリーワーズBimonthly Words

こころの三方よし

2022年03月

予約できる駐車場サービスの アキッパ(akippa)が便利です。
企業や個人が所有する空き駐車場をスマホなどで予約できるもので、
1日単位や15分単位で簡単に予約でき、コインパーキングより経済的。
支払いは事前決済なので、当日は現金不要で入出庫もスムーズです。

建築業界の人は工事現場周辺の駐車場確保が厄介ですが、
アキッパを利用してからは計画的に作業に取り組めるという。
また、大きなイベント会場の周辺では交通渋滞や路上駐車など、
いわゆる“駐車場難民”による問題の解決にも一役買っています。

事前に予約をしたいドライバーと、
空いた駐車場を活用したいオーナーをつなぎ、
交通渋滞や路上駐車で困っている地域社会に貢献する…。
アキッパは三者の悩みを同時に解決する事業になっています。

「まだ使えるが もう必要ないモノ」を出品して、
売り手と買い手をつなぐ、フリマ・アプリのメルカリ。
商品の価格を売り手が設定し、納得した買い手が購入する。
最終的には資源の再利用となり、地球環境にも貢献しています。

これらはネットを利用した新しいビジネスモデルのようですが、
事業としての本質は、「売り手よし 買い手よし 世間よし」
つまり、天秤棒を担ぎ日本中で商いをした近江商人の、
“三方よし”の伝統的な精神が反映されています。

経営には“ぶれない軸”が必要である

春というのは陽気と共に“賃上げ”も行われる季節でした。
定期昇給とは別に物価上昇に伴うベースアップがあり、
それは大幅アップか、わずかなのかの違いだけで、
春に給料が上がるのはウキウキとしたものです。

給料がアップすれば社員のモチベーションも上がり、
そのパワーが業績にも反映され、さらに会社が成長する。
こうやって 社員よし、会社よしの“Win Win”の関係ができ、
結果として世間の景気にも貢献する「三方よし」となるわけです。

「今回の物価上昇は本格的だ… よし、思い切って賃金も上げよう」
政府の要請もあり、大手企業の多くは賃上げに踏み切るでしょう。
インフレ傾向の世相をにらみ、景気回復の真偽は不明ですが、
中小企業の中にも“攻め”を選択する経営者がいます。

「ここは待とう… 世間の情勢を見てからでも遅くない」
物価上昇と景気後退が同時に起こる可能性もあるわけで、
当面は動かないで“守り”に徹する経営者もいるでしょう。
最悪の事態も視野に入れ、まずは慎重にいこうという判断です。

ここで給料を上げれば、皆が喜ぶことはわかっています。
しかし、人件費が経営を苦しめることも嫌ほど経験している。
賃上げだけでなく将来のためには人材投資や設備投資も必要だ。
さあ、今回の局面、中小企業はどう判断するのか、迷うところです。

いつだったか「経営には“ぶれない軸”が必要だ」と教わりましたが、
抽象的な表現であり、若い私にはよく理解できませんでした。
今、思い直すと“攻める力”と“守る力”をフルに発揮し、
引っ張り合いをしている力を“支える軸”なのかも知れません。

修業時代の「確乎不抜の志」が軸になる

宇宙はめぐり、一時も止まず、森羅万象は変化を続けています。
しかし、そこには変化しない一定の法則があることに気づきます。
一日は 朝・昼・晩、一年は 春・夏・秋・冬 とその順序を違えない。
“変化すれども、変わらない”このことを「易経」では“不易”という。

人の心も一時も止まることなくめぐり、
さまざまな影響を受けて変化を続けている。
成るようになるだろうと“攻め”を続けた人も、
情報一つで慎重になり“守り”に徹することもある。

経営者が、攻めか、守りかで迷っているのは、
「攻めてよし」「守るもよし」と思った証拠ではないか…。
それは、どちらも正解だと自分自身がいったん認めたことであり、
迷いの奥には、どちらに転んでも変わらない「不易」の心があるはずだ。

不遇な修業の時代に「確乎不抜(かっこふばつ)の志」をしっかり植えつけ、
どんなに苦しくても「志」が動いてはならない、と易経は説く。
えてして「志」も挫折すればしぼみ、地位を得ると変容しやすい。
いかに厳しい状況でも確固として抜けない「志」が原点に必要だという。

「志」はそれぞれの人が進む先にあるもので、人によって違う。
しかし、それは何のためか、誰のためかと問われると、
自分のための「志」であれば、決して成就はしない。
相手を思う気持ちの中にしか「志」は存在しないのです。

理念は進化するが 「志」は不易である

事業の見直しや新規事業の成否を占う方法はシンプルです。
「売り手よし 買い手よし 世間よし」で確認すればいい。
売り手と買い手の関係は、これからも良好に推移するか?
世間の人に喜ばれ、必要とされる存在になっているだろうか…と。

そして、リーダーの“三方チェック”が欠かせません。
事業を展開するための「攻め」と「守り」はできるのか、
何よりも事業に対する「志」は自分のためか、人のためか…と。
事業の成否は、中身よりもリーダーの生き様がカギを握るでしょう。

冒頭のアキッパの経営理念がユニークで、~“なくてはならぬ”をつくる ~。
「人の困りごとを解決することから“なくてはならぬもの”が生まれる」
こう考えて、社員皆で世の中の困りごとを調べて立ち上げたという。
「世のため 人のため」の姿勢が貫かれており、成長が期待されます。

経営理念は企業の発展と時代の変化によって進化すればいい。
しかし、経営者の「志」は不易なものであって欲しい。
「志」に裏打ちされた経営理念があるからこそ、
企業という大きな器に「魂」が入るのです。

大量生産、大量販売、大量廃棄で経済発展を遂げた日本。
大量廃棄を反省し、ムダを減らす循環型の社会づくりをめざし、
若い経営者による企業が成長し、世の中の仕組みも変化しています。

日本ではもともと、江戸の町で循環型社会が実現しており、
お互いが助け合い、健康で平和なコミュニティー作り、
つまり、SDGs は日本人が得意とするところです。

しかし、いったい何が原因になっているのか、
心の問題による事件が増えていることが心苦しい。
心の中で思い描いたものが現実のものになっていきます。
「こころの三方よし」が歪んでいないか、心したいと思います。

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