バイマンスリーワーズBimonthly Words
心のバランス
やり過ぎでは? と思うほどPRされるワクチン接種の啓蒙情報。
出産前の女性に、子宮頸がんワクチンを接種して本当に大丈夫なのか。
効いているのか分からないインフルエンザワクチンを、毎年受けてもいいものか。
人体への安全性は不透明で、何年か先に後悔することのないことを祈るばかりです。
近代西洋医学はみごとな発展を遂げ、人類に大きく貢献しました。
特に感染症などの予防に貢献した抗生物質やワクチンの発見は偉大です。
“人生わずか50年”といわれながら、世界を代表する長寿国になった日本。
その背景に、医療に関係する方々のたゆまぬ努力があったことは間違いありません。
一方で、抗生物質などは農薬や食品保存薬にも使われ、その副作用が心配されています。
「人はがんで死ぬのではなく、がんの治療で死ぬ」と言われるのはここにあります。
医療技術がめざましく発展しているのに、病人が減らないのは残念でなりません。
日本の医療の方向性が、大きな曲がり角に来ているのではないでしょうか?
近代西洋医学の考え方は、対症療法がベースになっています。
それは、まず病原菌や臓器の異変など病気の「原因」を突き止め、
手術や薬で、その原因を取り除くというもの。
このことから西洋医学では作用の強い薬が良い薬と見る向きがあります。
西洋医学から生まれた薬が使われるのは、病気の人だけではありません。
今回のオリンピックでも開会式の宣誓でドーピング問題が取り上げられ、
国内で100万人を超えたうつ病の軽症者へも薬物治療がされている。
スポーツや心の問題にまで薬が使われるのは、どうなのでしょう…。
西洋と東洋の組み合わせによる「統合医療」の時代
そこで今、漢方や中医学といった東洋医学が見直されています。
東洋医学は、身体のバランスが崩れた状態を病気とし、
天然の生薬、鍼灸、気功などによる根本治療がベースです。
特に、食事を最良の健康法とする「医食同源」の思想を大切にします。
東京吉祥寺の小児科医、真弓定夫氏は「薬を出さない」「注射を打たない」を貫く先生で、
子供が健康に生きるには医者の治療や薬より、生活習慣の改善を重視します。
先生は人間が必要とする食物のバランスは人間の歯を見ればわかるという。
歯は32本で上下左右に分けると8本ずつで、臼歯が5本、門歯が2本、犬歯が1本。
臼歯の役割は穀類(米、麦、芋、豆など)を噛むことで、門歯が野菜や海藻類を、
そして犬歯は肉や魚を食べるために存在しています。
つまり、穀類5、野菜類2、肉1の割合で食べるのが最適なバランスです。
日本人は約3千年もの間、変わらなかった和食(ごはん・穀物・野菜・小魚など)から、
60年ほど前から急に欧米食(パン、肉類など)が中心の生活に変わってしまった。
そして、家族がバラバラにものを食べる「個食」「孤食」が当たり前になった。
子供たちのためには、特に母親の生活習慣を改める必要がある、と先生はいいます。
また東洋医学では「未病」の考え方を大切にします。
身体のバランスに乱れがあれば、病気の一歩手前の未病とし、
本格的な病気になる前に、弱っているところを整え、正常に近づけるという考えです。
東洋医学は、代替医療というサポート役であり、西洋医学に代わることはできません。
たとえば、交通事故で大ケガをした患者はまず出血を止め、外科治療が必要になる。
ところがリハビリ段階になると鍼灸や指圧、不眠症にはハーブも効果がある。
今、医療の流れは、西洋と東洋の組み合わせによる「統合医療」の方向に移っているのです。
財務の悪化は、経営者の心の片寄りから
経営の世界も医療と同じような道を辿っています。
戦後の日本企業は西洋型の問題解決手法を導入し、成功しました。
それは、TQC(Total Quality Control:全社的品質管理)に代表される、
問題の特定 → 原因の究明 → 原因の除去(対策)という合理的な方法でした。
ところが西洋医学と同じく、この方法も見直す時期にきています。
つまり、西洋の手法に東洋の考え方を組み合わせるのです。
東洋型とは、何かと何かのバランスの崩れを発見し、正常に戻すことでした。
具体的な方法を、借入金を抱えた会社の例で考えてみましょう。
まず、財産と借入金とのバランスを確認します。
担保余力がなく、大幅に返済能力を超える借入金は、
資産処分も含めできるだけ早く減らさなければなりません。
放っておけば”返済のためにまた借りる”という悪循環に陥ります。
財務の悪化は、収入と支出のバランスの崩れに始まります。
売上代金が順調に回収できるなら、健康的な食事となりますが、
思い通りにいかないと金融機関の借入れという薬に頼るしかない。
なぜもっと早く、収入と支出のコントロールができなかったのか…。
経営者には、成功するまであきらめない「執念」が欠かせません。
しかし、執念が強すぎると回収見込みのない投資でも続けてしまう。
一方で”人事を尽くして天命を待つ”式の「諦観」の心境も重要です。
しかし、熟していない諦観、つまりあきらめの早い人は、入るはずの収入も得られない。
収支バランスの崩れは、経営者の心のバランスの片寄りから起こるのです。
薬師如来は 心の薬師
誰もが病にかかると弱気になり、医者や薬に頼りたくなります。
しかし、真弓先生はキッパリという。
「自分の病気は、自分しか治せない」
病気やケガを治すのは医者や薬ではなく、本人の自然治癒力にある。
病気が治らない理由を医者や薬のせいにしているうちは、治るものも治らない。
よくわかる話ですが、経営者もやっぱり人の子です。
心の奥底には、誰かに頼りたい依存心があるでしょう。
反対側には、甘えてなるものかとガチガチに構える自分もいる。
依存心と自立心、劣等感と優越感、そんなところを行ったり来たりの繰り返し。
こんな時、奈良薬師寺の中興の祖、高田好胤師の説法を思い出します。
かたよらないこころ こだわらないこころ とらわれないこころ
ひろく ひろく もっとひろく これが般若心経 空のこころなり
どうしても何かに頼りたい時は、少しばかり頼ればいい。
優越感に浸りたい一瞬があったら、自分で自分をほめればいい。
薬漬けにはならず、今必要な薬だと思ったら、こだわらないで使えばいい。
大切なのは、どちらかにかたよらない、何かにこだわらない、
そして、あることにとらわれないよう、心の中のバランスを保つこと。
病を治す功徳の力は、薬師如来が随一といわれます。
それは、名医や良薬とのご縁をいただくことかと思っていました。
薬師如来の功徳とは、心のバランスを取り戻す、こころの薬だったのです。