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バイマンスリーワーズBimonthly Words

人生 春夏秋冬

1996年01月

新春あけましておめでとうございます。

昨年は様々なことで読者の方にお世話になりありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い致します。

大変なことが続いた1995年が過ぎて、心あらたに新年をお迎えになったことと思います。

干支頭である今年の年頭には、どのような決意をされたでしょうか。21世紀をすぐそこに迎えるにふさわしい決意だったでしょうか。まだお屠蘇気分の抜けない方は、もう一度これからの人生についてじっくり考えてみませんか。いっぺんにすっきりした気分になると思います。

 

あなたの人生を春夏秋冬の季節に分けて考えてみましょう。

人の平均寿命が約80年。それを20年ずつに分けてみます。生まれてから20歳までを春、20歳から40歳までを夏、40歳から60歳までを秋、60歳からあとは冬となります。

まずは春。

あらゆる生命体に新しい命が宿ります。周りのあたたかい愛情に包まれたその小さな生命体は徐々に形を成してきます。ほのかで愛らしく、のびのびと成長する季節です。

人間でいえば、20歳位までは親や家族の庇護のもとでぬくぬくと成長できる年齢です。何にでも思い切って打ち込むことのできる楽しい時期でもあります。「春眠暁を覚えず」の言葉通り、ボーッとしていても生きていけます。

春が過ぎて夏に入る前には、梅雨を過ごさねばなりません。

梅雨とは一般の人にとっては、まことにうっとうしいものかもしれませんが、農作物にとってはなくてはなりません。

人間でいうと子供が親から自立しようという時期で、自分と親との思想的な違いや、社会の裏面やその厳しさに嫌気がさしたり、落ち込んだりする時期です。しかし、このような葛藤は後々の人生に成功するための礎となっていきます。

次は夏です。それも本格的な夏。

照りつける太陽の光を浴びて大きく成長できる時期です。農作物の生育にはこの恵みが欠かせません。日傘もなしで灼熱に耐える日々が続きます。暑さには弱いからといって冷房のおもいっきり効いた部屋に閉じこもっていたり、夜ばかり行動していると体調を崩してしまいます。

また、この季節には急に夕立が降ってくることもありますがこれも大切な恵みです。

人間の精神的成長では20歳から40歳位までのあいだは、とにかく外へ出て多くの人と出合い、吸収し、裸で体当たりし、素手でぶたれることです。夕立の雨のような精神的苦痛を受けることもありますが、これらもすべて教訓として心に刻まれていきます。

若い頃の体験はあらゆる経験が血肉となります。またこの時期に知り合った人との仲は、お互いが熱く燃えており、一生その関係が続くでしょう。

夏は夜ともいいます。昼間の太陽もいいけれど、夏の夜には何とも言い表わし難い趣きがあるものです。このことは、若い間には太陽の照りつける表街道を生きていく一方で、太陽のない裏街道も経験せよ、ということを意味しているように思われます。裏街道を一度歩いてみると、人間の醜さ、汚れた商慣習、様々な失敗などに遭遇します。ここで表街道に戻れる人と、そうでない人に分かれていきます。それらを反面教師として教訓にできる人と、その場の欲望に溺れ、怠惰な生活から抜けられなくなってしまう人に分かれてしまうのです。

裏街道を経験した上で、表街道に自力で戻ってきた人は、表街道しか知らない人より粘りのある強靭な精神力を持っています。

いずれにせよ、若い時代には情熱的に燃え、ダイナミックな行動をすることが大切です。

そうこうしているうちに秋がやってきます。

これまでの様々な努力の結果である実りを収穫する時期です。収穫作業はこれまで一緒に田畑を守ってきた近所の人達と一緒に行います。その実りを独り占めしようとする人はいません。そこには笑顔が溢れ、歓びの歌が聞こえます。収穫を終えると、奢ることのないように、そして来年も雨や太陽などの様々な恩恵が得られることを願ってみんなで祭りを行います。自然の恵みに対する感謝の祭です。夏の間には雨よ降れ、陽よ照れ、と願うことが多かったのに比べ、感謝することが多くなる時期です。

人間にたとえると、40歳を過ぎた頃からこれまでの努力に対する実りが表面化してきます。その度合は人によって様々です。周りの人々の協力を得られた人は大きな実りを手にします。しかし、そんな人ほどたくさんの実りを独占することはしません。様々な欲望がひろがる一方で、感謝心が大切になってくる時期です。

秋も深まり晩秋になると木々の葉が見事に色づいてきます。朝方にはぐっと冷え込み、その寒暖の差に絶えて燃えているのでしょうか。この燃える姿が一番美しいともいわれます。それぞれの葉は味わいのある美しさを披露したあと、散っていきます。潔いその姿は、焼かれようと、肥やしになろうと不満を漏らしません。精一杯のことをやったんだから、あとは後生のためにその身を捧げようという感じです。

人間でいえば還暦の近づいてくるころです。人間的な味わいを感じさせる年齢です。権限を譲ることに未練を持たない潔い姿です。これが本当の勇気なのでしょうか。

冬になりました。

秋に収穫された作物は大切に納めてあります。そして、来年のために種やも蓄えてあります。この種や籾が新しい年に実ってくれることを祈り、夢を膨らませます。

徳のある人間の最高の楽しみは、英傑を教育し世に送り出すことだといわれます。

いわゆる「出藍の誉れ」のことでしょう。自分の育てた人間が、自分以上の人間となって活躍することが最高の喜びだというのです。

 

人生の夏を歩いている方、おもいっきり燃えていますか? もし、もう秋口に入ってしまっているのなら残暑で熱く燃えましょう。

収穫の秋にいる方、収穫するものがないといってあきらめていてはいませんか。今からでも何かを植えれば冬までに収穫できます。また、収穫を独り占めしようなんて考えないでおきましょう。あなたがいい思いをしても、次の世代の人が不幸になります。

冬を生きている方、寒いからといってじっとしていては衰えるだけです。永年の間に蓄積された考え方や貴重な経験を次世代の人々にきちんと伝えてあげてください。あなたには人を育てるという大きな楽しみが残っているはずです。

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