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バイマンスリーワーズBimonthly Words

時流を追うな

2020年07月

「2020年には4万室が必要で1万室が不足します」
2016年に京都市は宿泊施設の拡充・誘致方針を発表。
そして2年が過ぎ、4万室どころか5万室を超えましたが、
「まだ足りない!」というムードから拡大方針は継続されます。

ようやくブレーキがかかったのは、消費増税のあった昨年秋。
市長が「宿泊施設お断り」を宣言しましたが… 時すでに遅し。
この時点で1万2千室が過剰になることが明らかになりました。
そして稼働率が下がり始めたこの時に、コロナが襲ってきたのです。

巨額の投資をするホテルプロジェクトはコロナ禍だからといって、
おいそれと中止できず、今もあちこちで工事音が響いています。
低い稼働率は長期化の様相で、投資をしたバスやタクシー、
土産店などの観光関連業の厳しさはこれからです。

休業要請で大打撃を受けた飲食業も痛ましい。
中小の店は倒産・廃業が続き、大手チェーンも閉店ラッシュ。
レジャー産業やスポーツ関係、各種のイベント事業なども、
来場者数が制限されており、いかにして収益をあげるのか…。

しかし、悲観する必要はまったくありません。
急激に需要と供給のバランスが崩れたのであって、
あなたの会社の商品価値が下がったわけではないのです。
あきらめずに真剣に考えるうちに、出口は必ず見つかります。

急激な成長の裏には 落とし穴が潜んでいる

~ 禍福は糾える縄の如し ~
災禍と幸福とは糾った縄のように表裏一体。
置かれた状態を悲観的に考えるのではなく、
これまでの課題を解決するチャンスとすればどうか…。

たとえばインバウンド客を失った国内の観光業は、
海外に逃げた日本人客を呼び戻すチャンスではないか。
タクシーアプリの導入に遅れていたタクシー会社の場合は、
今のうちにお客を取り込めば、近いうちに効率運行が可能になる。

最先端の人工知能(AI)を使った工場の自動化や、
AIによる接客や販売の省人化が進まなかった業界では、
感染防止のニーズから一挙に引き合いが増えているという。
わずかな市場ニーズの変化が、新たな市場を生んだわけです。

外部イベントもオンラインが主流になるでしょう。
当社のセミナーもオンライン上で行う“ウェビナー”
(“ウェブ”と“セミナー”を合わせた造語)を始めましたが、
遠方からでも参加しやすくなり、今後も増やしていく方針です。

今、世の中は「DX:デジタル・トランスフォーメーション」の方向に流れています。
横文字で難解ですが、要するに“デジタル化による変革”のこと。
多くの企業が事業の縮小、統廃合、再編成を行っていますが、
デジタル化の流れに合わせ、組織や役割までを見直しています。

緊急に導入されたテレワークは大手企業の9割が継続を表明。
社員同士の打ち合わせや会議はオンラインが主流になり、
取引先との商談や名刺交換もできるようになりました。
世の中は、DXなくして語れない時代に進化しています。

 

時流を追い求めるばかりに「時中」を外してはならない

経営者には「時流」を読むことが求められます。
その時流に乗ることで、会社が繁昌するわけです。
ところが、中国の古典「易経」ではこう教えています。
~ 時流に乗ってはならない 時流を追いかけてはならない
時流を追う者は 時流によって滅びる ~

時流に乗ると、時代の中心に我が身があると錯覚し、
いずれ流れに巻き込まれ、物事の本質を見失ってしまう。
そこで易経は、時流ではなく、「時中を観よ」と教えています。

時中とは“時に中(あた)る”の文字通り、
その時にピッタリのことを行うことをいいます。
春に種を蒔き、夏は雑草を刈り、秋に収穫、冬に種は蒔かない…。
当たり前のことのようですが、これが「時中」なのです。

テレワークを中小企業が導入するには、課題も多い。
最新機器を揃え、環境を整えるのはもちろんのこと、
今の人事評価制度も見直す必要があるでしょう。
「上司はちゃんと評価をしてくれているのか?」…と。

また、在宅でコミュニケーションが不足すると、
「あの人は本当に家で仕事をしているの?」
と誤解を招き、社員の心はバラバラになっていく。
リモートに偏ると、確実に人間関係が希薄になります。

デジタル化は、管理をされ、監視されている感じもします。
ところが中小企業に集まる人は、大手企業の効率重視をきらい、
温かい人間関係や、人とのつながりを大切にする人が少なくない。
私たちは今、この感覚を見過ごすことなく、深く受け止めておきたい。

中小企業の「時中」は お互いが信頼でつながること

易経は「時流」を否定しているわけではありません。
時流がぴったりと「時中」になる場合もあり、
それぞれの人や企業によって変わります。
時流よりも「時中」が肝心なのです。

総じて充分な信頼感が醸成されている組織なら、
デジタル化を進めることが「時中」になるでしょう。
一方、遅れているデジタル化を進めたいと考えるならば、
あわてずに、まず足元の信頼関係を固めることが「時中」になる。

テレワークの要諦は“離れてもつながる”ことです。
それはオンラインでなく、信頼の心でつながって欲しい。

ウソをつかず、ごまかさない風土が醸成されていますか。
部門間の連携や、上司と部下との信頼関係は充分でしょうか。

何よりもトップと幹部は信頼の心でつながっているでしょうか。
デジタルと信頼関係の微妙な陰陽バランスを大切にしたいと思います。

「遠く」を意味する“テレ”は、テレフォン、テレビジョン、
そして、テレワークにも使われ、遠くの人達をつなげました。
しかし、それは最も大切なことを実現するための手段にすぎない。
DXを必死に追いかけているうちに、目的を見失わないようにしたい。

 

さて、宿泊施設の問題を何とかしないと世界遺産の宝庫、京都もヤバい。
ご存知のように京都の名所は、ほとんど自転車で行ける距離です。
そこで、別荘代わりに京都のホテルでテレワークをこなし、
合間に京の文化と美味に浸る…という企画はいかがでしょうか…。

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