バイマンスリーワーズBimonthly Words
丸い月夜も 一夜だけ
この円安、いつまで続くのでしょう。
消費者物価を押し上げ、庶民の生活を直撃。
企業の現場では原材料や燃料代などが高止まり、
円安は輸入品に頼る企業の収益を圧迫しています。
円が売られ、金利の高いドルに資金が流れて起こる円安。
マイナス金利を続ける日本銀行が金融緩和方針を変更するか、
日本政府がうまく為替介入を実施すれば改善に向かうでしょう。
しかし、政府も日銀も今後どのように動くのか誰にもわかりません。
ところが、今とは正反対の“円高”で苦しんだ時代もありました。
’85年頃の日本経済は巨額の貿易黒字を出し、世界の市場で一人勝ち。
そんな日本を抑えるために米国主導で行われたのが「プラザ合意」でした。
当時1ドル240円程度の安値だったのを、無条件で円高に誘導されたのです。
結果は ’95年に1ドル80円、’11年には最高の75円にまで上昇。
円高はトヨタやソニーなど日本を代表する企業の輸出競争力を奪い、
政府も経済界も日本経済が沈没しないかと本気で心配しました。
ところが“円高メリット”が遅れながらも効いてきたのです。
それは原油や輸入品が円高で大幅に安くなっていたこと。
円高はデメリットとしての不況をもたらしましたが、
輸入を増やすことによるコストダウンが実現し、
円高メリットで経済戦争の危機を乗り越えました。
世の中の変化には 陰陽の法則が働いている
円安と同時に人手不足も深刻な問題です。
少子高齢化による人口減少が根底にありますが、
コロナ禍の反動で活況にある、観光や飲食サービス、
物流や建設業界なども人材を採用することが非常に難しい。
このような現象からわかってくることは、
好況になれば、企業の人材採用は困難になり、
不況になると、企業の人材採用は容易になるが、
学生や転職者の活動が困難になるという関係です。
これらの関係は、円とドルの為替の問題と同じです。
円高になると輸出企業が不況になり、輸入企業が好況に、
円安になれば輸出企業が好況になり、輸入企業が不況になる。
これが“トレードオフ(両立できない関係性)”という関係です。
現在、円安で苦しんでいる企業の反対側では、
“円安メリット”を受けている企業もたくさんあります。
よって円安が悪くて、円高が良い、などとは一概に言えません。
じつはこのような現象は“陰陽の法則”に沿って変化しています。
まず一つは、「陰陽の消長」という量的な変化の法則です。
陰と陽が大きくなったり、小さくなったりを繰り返し、
寄せては返す波のように、バランスを保ちます。
もう一つは、「陰陽の転化」という法則です。
それぞれが極限に到達すると、反対の要素に転化する。
陰が高まると陽に、陽が高まると陰に転じるというように
互いに依存しながらも、質的な変化が表れます。
このように円高と円安は、陰陽の法則に沿って変化し、
それぞれにメリットやデメリットがありますが、
そこには重要な教訓が残されています。
良いことも 悪いことも永遠に続かない
~ 丸い月夜も 一夜だけ ~
いいことは長く続くものではない。
何かを達成しても浮かれてはいけない。
一晩、喜びをかみしめたなら、翌日からまた、
次の満月(新たな目標)に向けて一歩踏み出すこと。
シドニー五輪で金メダルを獲った高橋尚子さんが、
高校時代の監督から教わった言葉で、こう語っています。
「新記録が出た日はもちろん喜びましたが、この言葉のお陰で、
翌日からいつも通りの練習を始めることができました 」
今は円安の恩恵を受けている企業も、
いつかは環境が反転し、厳しい状況になる。
それがいつかはわからないが、必ずやってくる。
円安の恩恵に気づかず、浮かれてしまってはならない。
そして丸い月夜の反対側を考えてみると、
~ 真っ暗な 新月の夜も 一夜だけ ~ となる。
満月が続かないのと同じく、暗闇の新月も続かない。
良い事だけではなく、悪い事も永遠には続かないのです。
今、円安や人手不足で苦しんでいる企業も、
必ずやってくるチャンスに向けて準備をしたい。
政府や日銀の動きを待っていても問題は解決しません。
経営環境の変化よりも、自分自身の変化に期待しましょう。
人間 腹をくくれば 強くなれる
中国の古典『易経』では“変化”を尊びます。
どんなに困難な時であろうとも、必ず物事は変ずる。
逆にどんなに安定した時であっても、必ず物事は変ずる。
満月が新月に向かうように、安定は傾くほうへ向かい、
また、傾いたものは安定へと向かう。 (「易経」一日一言)
人生にはさまざまな変化があるが「易」は変を尊び、
変化するからこそ、成長と発展があるとされています。
ところが、落ち込んだ時の現実は本当に辛いものがあります。
何かにすがりたい気持ちになるのが、人間の本性ではないか?
どんとかまえておれば なるようになる
人間 腹をくくれば 強くなれる
この詩と絵を画いたのは、京都府福知山市にある観音寺、
通称“丹波あじさい寺”の住職、小籔実英 氏です。
多くの著書と、日めくり型のカレンダーを通じて、
悩みを抱える人たちに勇気を与えてこられました。
私もこれまでの人生で落ち込むこともありましたが、
小籔氏の詩と絵でどれだけ救われたことか。
「ああ、そう考えればよかったんだ 」と。
思考を変えるだけで、悪いと思っていた現象が、
一瞬で良いことに変わる瞬間を何度も味わいました。
ウクライナから、今度は中東情勢が緊迫してきました。
戦争とは、自分たちは善であり、相手が悪である、に始まる。
ところが相手の悪は、相手にとって善であり、自分たちが悪になる。
“善は悪なり 悪は善なり”これが人類の持っている悲哀なのでしょうか。
為替の変動などの経済面での戦いは許されていい。
しかし、決して第三次世界大戦を起こしてはならないし、
断じて日本がその戦いに加担するようなことがあってはならない。