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バイマンスリーワーズBimonthly Words

花は桜木 人は武士

2025年03月

~ 初任給30万円時代に突入! ~
ユニクロの初任給が3万円増の33万円。
金融の初任給は明治安田生命が33.2万円で
東京海上日動火災は来年26年になんと41万円!

物価高騰に対応した賃上げのニュースが続きますが
実際は大手企業の人材獲得競争の武器になっています。
初任給アップは2年目以降の社員への影響が大きいために
高額給与の採用戦略は、中小企業ではほぼ不可能になりました。

ところが、大手企業の安定性と高収入を求めて入社したのに
安易に転職サイトに登録する社員が増えているのも事実。
一方、時代の先端を行くスタートアップの社員などは
不安定な会社なのにイキイキと仕事をしています。

一騎当千の少数精鋭部隊ができるのなら
大企業をはるかに超える年収を出してもいい。
しかし、そんな中小企業は一握りで長続きしない。
いかにして給与以外の魅力で採用・定着を図るのか?

AIやロボットは益々企業の現場に進出するでしょう。
だからこそ一人ひとりの個性と人間性が尊重され
やりがいと暖かみのある職場であって欲しい。
さあ、中小企業の強みとは何なのでしょう?

「義」と「仁」に集約された 武士道精神

真田広之さん主演の時代劇ドラマ『SHOGUN 将軍』が
米国のエミー賞で作品賞など18部門の賞を獲得。
近年、日本国内では衰退ぎみの時代劇ですが
なぜ海外の人たちの心をとらえたのか。

特に欧米の人は伝統的な日本の武士(サムライ)に対して
霊的で畏怖の念に近いものを感じているかも知れない。
それは教育者 新渡戸稲造 が1900年に著した
『武士道 The Soul of Japan』の影響が大きい。

熱心なキリスト教徒であった新渡戸は
世界の文化と比較しながら英文で伝えました。
日本の武士道を体系化した唯一の思想書とされ
その精神は「義」と「仁」に集約されています。

「義」とは人間としての正しい道
つまり正義のことで、最も厳格な徳。
「仁」とは他者に対する思いやりのことで
仁の精神は人の上に立つ者の必須の徳とされた。

戦いの歴史は、技術の発展と共に鉄砲から大砲へ
そしてボタン一つで殲滅できる核戦争に至りました。
しかし、日本刀で堂々と戦う武士の姿に世界は惹かれた。
それは人と人が一対一で対峙し、真剣に向き合っている姿です

ヒューマンサービスに強い組織は 攻めと守りのプロ集団

「社長とは話したことも 会ったこともありません」
このように語る大企業の社員は少なくない。
こう考えると中小企業の最大の魅力は
経営トップが身近にいることでしょう。

しかし、近くにいても何もしないのではいけない。
上司と部下が1対1で面談する“1on1”という手法。
継続すれば人材育成やモチベーションの向上に効果があり
少人数の組織ならトップ自ら毎月1回のペースで行うのがいい。

問題は“1on1”でどのように接するのか?
経営トップなら細かな指摘はしない方がいいが
かといって社員に阿(おもね)るような姿勢ではいけません。
一人ひとりに愛情を注ぎ、時には真剣に叱ることも大切です。

事業の強みも一人ひとりのお客様に応対する
質の高い“ヒューマンサービス”を追求するのがいい。

来客の顔と名前を覚えた“伝説のドアマン”がいるホテル事業。
海外の要人から“指名されるドライバー”を抱えたタクシー会社。
医師や弁護士、コンサルタントも同じ「ヒューマンビジネス」であり
質の高いサービスが口から口へ伝わり「信頼」が事業の基盤になっていく。

小売業や卸売業も事業の本質は“サービス業”であり
価格や品揃えは特徴であって強みにはなりません。
味が第一の外食産業もヒューマンビジネスで
お客と店員との信頼関係で成り立っています。

顧客からの高い評価に喜びを感じた社員は
益々仕事が楽しくなって愛社精神が自然に育まれ
友人・知人を介した「リファラル採用」も可能になる。
ヒューマンサービスに強い組織は攻めも守りも強いのです。

「心」の上に「士」と書いて 「志」と読む

~ 花は桜木 人は武士 ~
室町時代の禅僧 一休宗純の名言です。
可憐に咲いた桜の花は 人の心を豊かにし
何もいわずに潔く、春風と共に散ってゆく…。

桜もヒューマンサービスを実践していました。
そんな桜を愛するように、武士道を愛した日本人。
強ければいい、結果が良ければいい、は武士ではない。
効率は重要だが、真っ先に効率を追う経営はいただけない。

ヒューマンサービスを確固たる強みにするには
教育のための費用と、莫大なエネルギーが要ります。
人を相手にするため手間がかかり効率も落ちるでしょう。
しかし、必ず成果が出る政策であることに間違いありません。

武士は強いだけでは失格で、武士道は文武両道を求めました。
そのため武士は寺子屋で子供達に読み書きを教えており
それもほとんど無報酬のボランティア教育者でした。
武士は人を育てることも真剣に取り組んでいたのです。

「心」の上に「士」と書いて…「志」と読む。
事業家でありながら、教育者としての「志」を抱く
それは二刀流、今の時代の「ハイブリッド型」の経営者。
これが文武両道を備えた、理想の経営者なのかも知れません。

第2次トランプ政権に振り回され
予断を許さない状況が続いています。
こんな時こそ全力で人材育成に取り組み
やりがいと暖かみのある組織作りを目指したい。

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