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バイマンスリーワーズBimonthly Words

大家族主義

2020年03月

~ つながっていないのに なぜ充電できるのか?~
万一に備えて車載のスマホ充電器を購入したら、
それは置くだけで充電されるという便利なものでした。
ワイヤレスなのに充電できるのが手品のようで不思議です。

この機種には「電磁誘導の原理」が働いているらしい。
充電器の中の「送電用コイル」に電気を流すと磁界が発生。
そこへ「受電用コイル」が内蔵されているスマホを近づけると、
スマホのコイルが空気中の磁界に反応して電力に変換されるという。

数年前に実用化されたこのワイヤレス電力伝送の技術は、
スマホや電動歯ブラシなど近距離の送電に限られています。
今後は、一般の家電製品やロボットなどにも幅広く応用され、
走っている自動車に給電できる技術開発も進んでいるとのこと。

つながっているために起こった問題もあります。
メールやSNSはいつでも、どこでも使えて便利ですが、
社員にとって勤務時間外に仕事のメールが届くのはどうか…。
いわゆる“つながらない権利”が社会問題になっているのです。

しかし、仕事とプライベートを完全に区別することは難しく、
嫌な上司や、ウマの合わない人が職場にいるのは変わりません。
つながりたくない人に対して“つながらない権利”が認められても、
心の中にその人がいる限り、ワイヤレスでつながっているようなものです。

経営者の私的な悩みは 組織に大きな影響を与える

人材不足が深刻になり、各企業は採用と定着に躍起になっています。
人材ニーズは多様化し、残業削減やテレワークなどさまざま。
しかし、どれほど働きやすい環境や制度を整備しても、
ビックリするほどの待遇や地位を用意しても、限界がある。

心理学者のアドラーは言いました。
~ 人間の悩みは全て 対人関係の悩みである ~
給料が安い、労働時間が長い、といった退職理由が多いが、
それは表向きの理由であって本当の理由ではない。

給料が安いのは、自分のことを認めない上司が気に入らない、
過酷な労働を平気で強いる経営者の人格そのものが嫌い、
といった対人関係の問題に集約されるというのです。
社員が抱える問題は人間関係に尽きるといえるでしょう。

経営者の悩みも対人関係に行き着きます。
まずは、幹部社員としっくりした関係にならない。
ひいては親子の関係、兄弟の関係、嫁姑との関係など、
切るに切れない人間関係が会社経営に大きな影を落とします。

経営者に公私混同があってはなりません。
しかし、経営者の公と私を区別するのは難しく、
また、会社で起こる問題と複雑に絡み合っています。
だからこそ、私的な問題は自ら解決する努力が必要です。

悠々と経営をしているように見える経営者でも、
私的な悩みを抱えながら精一杯 経営に打ち込んでいる。
経営者の“心のひだ”の乱れが組織に与える影響は極めて大きい。
あぁつらいかな 中小企業の経営者たるものは…

血縁にこだわると 経営判断がぶれる

 やれ打つな 蝿が手をすり 足をする
 雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る
小動物に心を寄せたやさしい作品を詠んだ小林一茶。
ところが、作品の背景にある壮絶な人生には驚かされます。

一茶は信濃の国の農家に生まれ、3歳で生母を亡くします。
父が再婚し、異母弟が生まれた10歳の頃から継母と反目し、
長男でしたが15歳の時に江戸へ奉公に出されてしまいました。
江戸で俳句を学びますが、修行のために苦しい放浪の旅を続けます。

39歳の時に故郷に帰って父親の最後を看取りますが、
遺産相続で継母・異母弟との間で骨肉の争いを繰り広げます。
12年間も続いた争いは菩提寺の住職が間に入ってようやく決着し、
やっと落ち着いた一茶は故郷で家を得て、52歳で初めて妻帯します。

そして54歳で待望の子供を授かりましたが喜びも束の間、1か月で夭折。
続く長女は1歳で、そして次男、三男、妻までも病で失います。
晩年に幼い子供と妻に先立たれ、その落胆たるや いかばかりか…。

 我と来て 遊べや親の ない雀
 痩せ蛙 負けるな一茶 これにあり
いずれもわかりやすく、心やさしい作品ですが、
家族の愛に恵まれなかった一茶の心情が滲んでいます。

何気ない一言から始まった親と子の確執。
わずかな価値観の違いで生じた兄弟間の争い。
血縁でつながっているから安心だ、と思っていたら、
かえってお互いのわがままが出て、良くない関係に陥る…。

少子化の昨今、オーナー企業の後継者が見つからず、
養子、娘婿、時には他人に経営を任せるケースも増えている。
しかし、期待して権限を譲ったが、信頼できるまでには至らない。
引き受けた側も期待に応えたいが、自分にできるか不安でたまらない。
バトンを渡すも、受け取るも、事業承継の現実は多くの難題を抱えています。

大家族主義経営は 心でつながっている

 雪とけて 村一ぱいの 子どもかな
雪がとけ、待ち遠しかった春を迎えた雪国の子供たち。
はじけるような喜びがひしひしと伝わる 一茶晩年の名句です。
相続問題が解決したことが、雪解けと重なったのでしょうか…。

いや、そんなレベルの作品ではないでしょう。
相次いで子供を亡くし、失意のどん底にあったが、
今、自分の子供はここにいっぱい元気でいるではないか…。
次世代を担う命が輝いていることに気づいたのではないでしょうか。

 

血縁の近い人が使命感を持って経営に携わってくれるなら最高です。
しかし、血のつながりがなくても経営の「志」は伝達できる。
真剣に経営に打ち込んでいる姿勢を近くで見せるだけで、
そのエネルギーと思想は確実に充電されるでしょう。

~ 大家族主義経営 ~
血のつながりよりも、心のつながりを優先しましょう。
M&Aで会社を売ってしまう選択肢も悪くはないが、
心の通じる同志がいないか、もう一度見渡してはどうか…。

経営権を譲ると決めたら、何がなんでも信頼する。
後継経営者は、実践を通じて実力をつけ、信頼に応える。
バトンを渡すも、受け取るも、自分に厳しく、相手にやさしく…。
これからの時代、信頼の心でつながった大家族主義経営を目指したい。

天はあなたに解決できない問題を与えません。
だから対人関係の煩わしさから逃げないでください。
正念場の今、ここで踏ん張って欲しいという願いを込めて、
ワイヤレスですが、力の限りのエネルギーを送ります。

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